580 :1/3:2006/05/28(日) 03:21:00 ID:2RhLowUU0

じゃあ俺とじじいの話でも。 長い。

柔道五段、がっしりした体格で、土と汗のにおいのするでかい背中。

日に焼けた顔。俺がろくでもないことをする度にぶっ飛ばされた、荒れた手。

素直じゃなくて憎まれ口ばっかり叩いてた俺は、それでもやっぱりじじいが好きで、

だから(自分なりに)親しみを込めてじじいと呼んでいた。

俺が今も尊敬して止まない、そんなじじいの葬式の通夜での話。

5年前、7月の終り頃。

俺の故郷は、今では薄れたとはいえ、それでも土着の、独自の信仰がまだ残っている。

一般的な葬式の通夜は、酒飲んで騒いで、ってな感じ(なのか?よくわからんけど)

俺の地元の場合はかなり異様で、四方が襖になっている部屋を締め切り、仏(このときはじじい)を中心に安置し、

血縁の男4人がそれに背を向け、四方に座るというもの。更にこの時、各々が白木の柄の小刀一振り(村で神事用に管理してるのを借りる)を傍らに置く。

その時高校生になったばかりだった俺にはそれが何の意味かは知らなかったが、その座る役目「死守り(しもり、というらしい)」をするよう、祖母に言われた。

「お前は爺さんの若い頃に瓜二つだ。継いだ血は濃い。お前にしかできん」と。

要するに、鬼除けなんだそうだ。魂を喰らわれないように、と。

死守をするに当たってのきまりがある。

・何があっても後ろを振り向いてはいけない

・誰に名を呼ばれても応えてはいけない

・刀を完全に鞘から抜き放ってはならない

の三つ。

寝ないとかは大前提で。死守り以外の人間にも、その部屋には決して近づくなとか、襖や扉を開け放つな、とか色々と決まりがあるらしい。

ワケがわからなかったが、尊敬していたじじいの通夜、一つくらいじじいの為に立派に

成し遂げてやろうと、杯に注いだ酒を飲まされた後、死守りに臨んだ。

じじいの弟、じじいの息子(叔父)2人、そしてじじいの長女(母)の子の俺。

俺の座ったのは、丑寅の方位だった。

ChatGPT Image 2025年7月23日 09_55_31
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Source: 哲学ニュースnwk